ヴィンテージパールについて Vintage Pearls

GRACE PEARLSにて“VIntage”として出品しているものは、全て90年代のあこや真珠です。

以前、お客様からヴィンテージパールについて、「90年代のパールの方がテリがよく見える」と仰っていただいた事があります。

90年代は日本のあこや真珠養殖業にとって、とても大きな出来事が起こっていました。

2019年、あこや貝の稚貝が大量死している、というニュースを多くの方がご覧になったのではないかと思いますが、あこや貝が大量死したのは今回が初めてではありませんでした。90年代にもあこや貝が大量死し、深刻な問題となっていました。

1994年辺りから海に赤潮が出始め、1996年頃からアコヤガイが病気にかかって大量死する事態が愛媛から全国的に広がりました。

後に「赤変病」と呼ばれる感染症が原因と分かりました。数年間に及び原因不明のままで、あこや真珠の生産量は年を追うごとに減っていき、死亡率は当初50%、1998年には75%にもなったと考えられています。

その間、対応策のための研究や実験が重ねられていました。当時、中国においてもあこや真珠の養殖が行われていたため、対応策の一つとして、中国のアコヤガイとの交雑種が試されました。日中交雑種の生存率は高く、感染症に耐性を持つ種を作ることができました。しかし、色や光沢の面では課題があり、その後も研究が重ねられ、改良されていったそうです。この赤変病の事態が落ち着くまで、約10年という長い歳月を要したそうです。

当時の業界の方々の気持ちを想像してみますが、どれだけ想像しても、どんな思いだったのか、当然知る由もありません。

本店で扱っている90年代のあこや真珠は、そのような海の環境の中で生き残ったアコヤガイから採れた真珠です。祖父が真珠ブローカーをやっていた頃のデッドストックとなります。

祖父はマメだったのか、保管されていた真珠には仕入れた年が記されていました。

中国との交雑種であるアコヤガイが、2000年以降に活用されていくわけですが、90年代の真珠は交雑種ではない、在来種あこや真珠である可能性が高い、と言えるかもしれません。

ただ、当時の真珠の全体的な質については、一概には言えない、というのが私の考えです。当時から真珠事業に関わってきた方が経験則から語るのは、ぜひ私もお聞きしたいと思うのですけど…。90年代前のものが良いか、2000年以降のものが良いかは一口に言えず、どの年代においても真珠の質はピンからキリまであると私は考えております。手元にある90年代のパールは、美しいと思うものもあれば、中には劣っているものもあります。

長年営んでいらっしゃる業者の方々とお話しする中で、「今は昔と比べると貝が元気じゃない」とちらっとお聞きした事もあります。2019年はまた稚貝が大量死している、というニュースも見られ、不安な要素もあります。ですが、納得するものを商品として出す事には変わりありません。故郷が大好き、あこや真珠が大好き、それで始めたことなので、信じてやっていこうと考えています。

ちなみに、90年代のあこや真珠の大量死が起こるまでは、英虞湾(現在の志摩市・旧志摩郡)などのリアス式海岸には、あこや真珠養殖のカゴが並び(現在もありますが、もっとたくさん)、貝の老廃物や真珠が採取された後の貝殻がそのまま海底に溜まり、海の負担となっていたのではないか、という事も見直され、県や市が介入して海の環境改善に積極的に取り組み始めたんだとか。(そういえば、帰省した時、市の分庁舎の前で“界面活性剤を減らそう”というような内容の大きな掲示物を見た事があったような…。)

90年代のパールについては、その年毎のデッドストックが手元にありますので、生まれた年の真珠ジュエリーのリクエストをしていただく事も可能です。誕生した年と同じ年に、あこや貝の母貝 で育てられた真珠のアクセサリーは、自分用にも、プレゼントにもお勧めです。年によって、在庫はまちまちですが、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください☺️

それにしても、日本の真珠養殖は歴史が長く、奥が深くて面白いです。まだまだ勉強していきたいと思います😊

参考図書:『真珠の世界史 – 富と野望の五千年』山田篤美・著 (中公新書)